2025年度JKA補助事業「炭酸水と鉄を活用する低温アンモニア合成反応の効率化」成果報告
1.補助事業の概要
(1)事業の目的
アンモニア(NH3)は窒素肥料の原料として人類の食糧を支え、近年は水素キャリアやクリーンな燃料としても注目されている。本研究では、工業的なアンモニア生産法であるハーバー・ボッシュ法に代わる温和な条件のアンモニア合成法の開発を目的とした。窒化鉄と炭酸水を原料として常圧下、室温付近での反応により、アンモニア合成と、反応促進剤でもある二酸化炭素の固定を効率的に進行させることを目的とした。
(2)実施内容
窒化鉄原料と炭酸水による反応実験を行い、定量分析を行って物質収支を確認し、化学反応式との対応を確認した。その結果、本反応は金属のFeと水由来の水素Hとの酸化還元反応として説明でき、同時に二酸化炭素(CO2)を炭酸塩として化学量論的に固定化できることを確認した。CO2は炭酸水素イオンHCO3–のかたちで触媒的作用により反応を促進することが確認された。
アンモニア生成は窒化鉄内のNの挙動が鍵となり、Nの窒化鉄内部から表面までの拡散・移動を促進することでNH3の生成速度や生成量が向上する。したがってNの移動が容易な結晶構造の窒化鉄を選定することが有利になる。さらに、窒化鉄の前処理や添加物の付与によって、反応速度とNH3生成量の向上が図られ、反応効率化のための指針を得ることができた。
今後も引き続き反応過程の解析や反応条件と反応性との関係、添加物の効果の分析を行い、効率的な反応条件の検討を進めていく予定である。
2.予想される事業実施効果
本研究では窒化鉄を原料とし、炭酸水の利用により常温・常圧で水を水素源とするアンモニア合成ができること、そして適切な条件下でより効率的に反応を進行させられることが確認された。鉄は安価で普遍的な元素であり、鉄に窒素を化合させた窒化鉄は社会的にも活用が進められている安定な物質である。一方、炭酸水を用いことで反応速度が上昇し、温和な条件下で容易にアンモニアが得られるだけでなく、二酸化炭素を活用しつつ最終的に炭酸塩として固定化することが可能となる。
なお、本補助事業について得られた成果については国内外の学会や論文等で発表するとともに、学内での研究発表会や学外研究者とのディスカッションを行っており、本補助事業は概ね良好に進捗しているとして評価された。
3.事業内容についての問い合わせ先
所属機関名: 学校法人五島育英会東京都市大学
住 所: 〒158-8557
東京都世田谷区玉堤 1-28-1
担当部署: 研究推進部 外部資金課