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研究内容・研究テーマ

研究内容

 

1. 水素エネルギーをつくるには!? ~化学反応の観察とメカニズムの解明,効率的な反応条件の決定~

水素エネルギーはそもそも天然にはほとんど存在しません。したがって他のエネルギーから変換してつくる必要があります。私たちの研究室では使用済みのスクラップ鉄がもっているエネルギーを使って、水を分解して水素をつくる研究をしています。このとき二酸化炭素を加えると、常温で水素を発生させることができます。つまり廃棄物(鉄、二酸化炭素)から水素をつくり出すことができます。また、窒素肥料の原料として人類の食糧を支え、近年は水素キャリアとしても期待されるアンモニアも、類似の反応で鉄の窒化物から合成することができます。

    ★ポイント: 二酸化炭素が水に溶けて生成した炭酸が、水素イオンを運ぶとともに、鉄をイオンとして溶かす
    ★化学反応式: Fe+H2O+CO2 → FeCO3 +H2
    ★キーワード: 水素エネルギー、エネルギー変換、物質変換、アンモニア、環境とエネルギー・資源問題、リサイクル、酸化還元反応、二酸化炭素・炭酸、反応機構、反応速度論と活性化エネルギー、pHと化学平衡、ガスクロマトグラフィ

現在の研究テーマ

  • 効率的に水素を発生させるための反応条件や、添加物の効果の確認
  • 鉄鋼試料からの水素生成における不純物元素の影響評価
  • 窒化鉄からの常温常圧アンモニア合成

図1 発生した水素を燃料電池に導入してLEDを点灯させることができる

 

2. 機能性材料の開発 ~セシウム吸着能をもつ粘土鉱物の分析と開発~

東日本大震災に伴う福島第一原子力発電所事故で放出された大量のセシウム137(137Cs)は、現在も周辺地域に留まって主な被ばく源となっています。Csは土壌中の粘土鉱物に強固に吸着しているためこれを取り除くことは容易ではありません。そのため、粘土鉱物におけるCs吸着メカニズムの解明や効率的なCs脱離方法の確立などが求められています。私たちの研究室では、粘土鉱物の結晶構造を観察してCs吸着挙動の解明を進めたり、Csを選択的かつ経済的に分離回収できる優れた吸着材となる粘土鉱物の開発を行っています。

    ★ポイント: 層状構造の粘土鉱物は層間にアルカリ金属・アルカリ土類金属の陽イオンを含んでおり、これがCsとイオン交換することで、Csを取り込むことができる
    ★化学反応式(アイラアイトの場合): Na2O・8SiO2・10H2O + 2Cs+ → Cs2O・8SiO2・10H2O + 2Na+
    ★キーワード: セシウム吸着、粘土鉱物、イオン交換、層状化合物、ケイ酸塩、水熱合成、結晶構造、X線回折、熱分析

現在の研究テーマ

  • 粘土鉱物からのポルサイト合成によるセシウム固定
  • 層状ケイ酸ナトリウム「アイラアイト」の合成とCs吸着メカニズムの解明

図2 粘土鉱物バーミキュライトは層間のMg2+とのイオン交換によりCs+を取り込むことができる

 

図3 アイラアイトは層状構造をもつケイ酸ナトリウムで、層間のNa+とのイオン交換によりCs+を取り込むことができる

 

3. 廃棄物の分析とリサイクル活用 ~鉄鋼スラグのX線分析と資源化~

私たちの社会の産業と生活を支える鉄(鉄鋼)を製造すると、鉄鋼スラグという廃棄物が大量に発生します。これを資材として有効活用するには、そこに含まれる成分を把握する必要があります。酸化カルシウム、酸化鉄ほかの酸化物、ケイ酸塩、リン酸塩、炭酸塩などさまざまな成分が含まれており、それらの種類や含有量を分析し、性質を調べるため、私たちの研究室ではこれらスラグに含まれる成分を試薬から合成しています。そして粉末X線回折法や電子顕微鏡法、熱分析法による分析や、水蒸気処理、熱処理、酸処理、溶媒抽出などさまざまな処理を行い、スラグと比較することで、スラグの性質の理解を進めています。

    ★ポイント: 鉄鋼スラグの成分は岩石、鉱物などに近く、これを有効利用することは天然資源の節約、省エネルギーにつながる
    ★化学反応式: CaO + FeO → (Ca,Fe)O,  CaO + H2O → Ca(OH)2
    ★キーワード: 鉄鋼スラグ、酸化カルシウム(ライム)、定量分析、X線回折、熱分析、電子顕微鏡、溶媒抽出、固溶体、水和反応、メカノケミカル合成、高温固相反応

現在の研究テーマ

  • X線回折法によるライム相の分析、特にFeO等との固溶体形成による水和反応性の評価
  • スラグ中の複酸化物によるライム相の水和抑制作用の解明

図4 ライムCaOとFeOが固溶体(Ca,Fe)Oをつくると水との反応性が変化する

 

図5 転炉スラグの元素分布(EPMA像) 含まれている物質を分析して資源としての活用につなげる

 

4. X線でさぐる物質の世界 ~X線による物質の分析・評価と化学反応や機能発現メカニズムの解明~

X線というとまずレントゲンをイメージする人が多いと思いますが、X線はレントゲン撮影のような“透視”ができるだけでなく、吸収や散乱の現象を使って原子を分析することができます。X線は可視光線と比べてはるかに波長が短いので、私たちが視覚(可視光)により見ることができるよりもっと小さい世界を観察することができ、どんな元素が含まれているか、そしてそれらがどんなふうに並んで物質をつくっているのか、さらには電子がどんな振る舞いをしているのか、といったことがわかります。すなわち、物質がどのように形づくられているのかそしてどんな性質をもつのか理解する助けになります。
私たちの研究室では、合成した物質や、面白い性質・機能をもつ材料、リサイクルしたい廃棄物などについて、どのような構造や性質をもっているかをX線を使って評価し、またそれらが化学反応を起こすと、どのように物質が変化するかなどの観察を行っています。さらに私たちの研究室では、物質や材料をよりリアルに、それらが働いているところを直接観察するための新しいX線分析装置の開発も行っています。

    ★ポイント: X線をつかって物質を分析すると、原子の並び方や状態、物質の性質をリアルに観察することができる。
    ★キーワード: X線回折法、蛍光X線分光法、X線スペクトル解析、装置開発、機械設計・工作、プログラミング

現在の研究テーマ

  • 結晶構造の3次元分布を観察できる共焦点型のX線回折装置の開発
  • X線分析法による反応や機能発現のメカニズムの解明

図6 転炉スラグの蛍光X線分析 固体試料に含まれている元素をそのまま分析できる

 


 

図7 共焦点型X線回折装置を用いると試料内の特定部分の結晶相の分析ができる

研究室所有装置

X線分析装置

・粉末X線回折装置(リガク Miniflex600)

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物質にX線を照射すると、X線が結晶格子で回折を示す現象を利用する装置です。
回折線のパターンから未知試料の同定が、強度から定量などができます。
同定はデータベースの回折線パターンと照らし合わせて行うため、複数の物質が混ざっていると大変な作業です。(中町)

・蛍光X線分析装置(テクノエックス FD-03)

試料にX線(一次X線)を照射することで発生する元素固有のスペクトル(蛍光X線)を検出し、元素の定性、定量を行える装置。
液相固相問わず測定でき、電圧、電流、時間、フィルターを変更することでNe(ネオン、原子番号10)~U(ウラン、原子番号92)までの元素を分析できる。(安保)

・ポータブルX線スペクトロメータ(AMPTEK X-123)

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エネルギー分散型のSi半導体検出器です。蛍光X線を検出して元素分析に使っています。手のひらサイズでどこにでも配置しやすいので、X線装置の調整などによく使っています。(高橋)

・共焦点型X線回折装置(自作)

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X線集光素子を2つ組み合わせて、これらの焦点を合わせて共焦点を作ることで、微小領域のX線回折を観測できる装置を開発しています。
試料内部の深いところや局所領域、また積層試料の各層ごとの分析など、従来の粉末回折装置(上記Miniflex600など)ではできなかった分析ができます。(高橋)

その他分析装置

・示差熱熱重量測定装置(島津製作所 DTG-60)

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試料と基準物質に熱を加え、両者の温度差により発熱反応や吸熱反応を観察し、また重量変化を測定する装置。試料の温度による状態変化・相転移や分解・化学反応などを知ることができる。(豊田)

・紫外可視分光光度計(島津製作所 UV-2450)

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紫外~可視光のさまざまな波長の光を試料に照射することで、
どのような波長の光を吸収(または反射)するかを示すスペクトルを測定することができます。
吸光度は物質の量に比例するため、水溶液などに含まれる物質の濃度を求めることができます。(丸)

・ガスクロマトグラフ(島津製作所 GC-8A)

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気体を注入してどんな成分がどれくらいあるかを調べられる装置です。
本研究室では主に水素や二酸化炭素の検出に使用しています。
とても便利ですが、装置を立ち上げて信号が安定するまでにとても時間がかかるのがつらいところです。。。(海沼)

・ガスクロマトグラフ(島津製作所 GC-14B)

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上のガスクロ(GC-8A)と同じように気体の分析ができる装置です。気体と、装置の中に入っている固体との相互作用を利用することで、成分とその量を分析することができます。本研究室では液体中に含まれているアンモニアの分析に使っています。(桝添)

・ガス吸着量測定装置(カンタクローム AUTOSORB-1)

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固体の表面にガス分子がどのように吸着するかを評価することで、表面積、細孔分布、真密度などの固体の特性を分析する装置。(桝添)

・磁気天秤(Sherwood Scientific MSB-MKI)

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簡便・迅速に固体、液体、気体の磁化率測定ができる小型の装置です。(江場)

・pHメータ(堀場製作所 F-51)

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水溶液中のpH値(酸、アルカリ度)をガラス電極を用いて高精度に測定することができます。(山口)

電気炉

・赤外線ランプ加熱炉(MILA-3000)

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真空または各種雰囲気下で最高1200℃までの加熱を行うことができます。急速加熱、急速冷却や、細かな温度コントロールも可能な装置です。(小島)

・高温電気炉(アドバンテック東洋 KS-1701)

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大気中で最高1600℃までの加熱ができる高温電気炉です。最高温度まで室温から約60分で到達します。
炉内寸法は150mm3。発熱体はカンタルスーパー1800(MoSi2)です。
炉内で試料が爆発し、カンタルスーパーが折れて修理に数十万円かかったことが・・・(泣)。(江場)

・高速昇温電気炉(モトヤマ SK-2030D)

温度と時間をプログラミングすればその通りに加熱してくれる電気炉です。
1100℃まで最短で45分で昇温できます。(笠井)

・小型電気炉(城田電気炉材 MF3)

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小さくても1000℃までの加熱ができます。小窓がついていて、焼成しながら中の試料の状態を確認することができます。ただ自動温度制御ではないため、こまめに様子を見る必要があります。(小清水)

・オートクレーブ(日東高圧 START200)

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200℃、20MPaまでの高温高圧雰囲気下で攪拌しながら、試料の水熱処理やソルボサーマル合成ができます。操作は非常に簡単で、温度を設定しヒーターのボタンを押すだけで加熱が開始されます。(小清水)

・オートクレーブ(日東高圧 START200高温NewQuick)

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20MPaまでの高圧雰囲気で試料を処理できる装置です。こちらは6本のボルトで蓋を閉めて密閉します。攪拌機能はありませんが300℃まで急速加熱できます。(小島)

・真空乾燥機(ヤマト科学 ADP200)

真空中で試料を乾燥させることのできる便利ですごい機械です。
主に、生成した無機物の洗浄→乾燥→XRD測定という実験の流れの中で使います。
研究室でも多くの人たちがお世話になっています。(海沼)

その他反応装置

・遊星型ボールミル(ナガオシステム PLANET M2-3F)

高速回転により、試料の粉砕、混合、分散をして、ナノ、ミクロンサイズまで細かくすることができる装置。
強い衝撃力を生かしてメカノケミカル合成もでき、つまり運動エネルギーを利用した反応器としても利用可能。
外形寸法はW260×D260×H340mmとコンパクト、最大公転回転数は900rpm、最大自転回転数は2,250rpm。(安保)

・振盪恒温器(アズワン SI-300C)

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温度を常に一定に保ち、中に入れた試料を激しく振り動かして攪拌することができる装置。1分間に2500回振動させることができる。(桝添)

・マイクロ波反応装置(IDX グリーン・モチーフI)

(休眠中 …zzz…)

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小型機器類

・ロータリーポンプ(adixsen Pascal 2010C1 & 2005I)

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最も一般的な真空ポンプ。内部の羽が回転することによって空気を排気する。反応や加熱などの際の雰囲気制御や、真空乾燥器の脱気に使用。(豊田)

・高圧プレス(NPaシステム TB-100H)

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主に物質の合成や処理のための粉体成型に使用していますが、時には七宝焼き素地用の銅板打ち抜きに使うこともあります。・・・ただいまプレス中!(江場)

・遠心分離機(KUBOTA 4000)

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遠心力で、液体中に分散した固体を液体から分離したり、また水と油のように溶け合わないで比重の違う液体と液体を分離したりすることができます。(山口)

・グローブボックス(サンプラテック M-600H)

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中の空気を置換して様々な雰囲気で実験操作ができます。
ビニールの手袋をはめて操作するので手汗と匂いがひどくなりますが、とても役に立ちます。(笠井)

・3Dプリンター(ALUNAR M508)

初代マシンの4分の1くらいのお値段でしたが、よく働きます。ちょっとした部品をいろいろ作っています。かなり楽しいです。(江場)

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